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2026/09/15農地は誰でも買えない、山林は許可が要らない——相続した土地は種別で売り方が変わる【茅野市・原村・富士見町】
農地は誰でも買えない、山林は許可が要らない——相続した土地は種別で売り方が変わる【茅野市・原村・富士見町】
相続で受け継いだ土地を一度にまとめて整理しようとすると、たいてい途中で止まります。金額の大小ではありません。種別が違えば、売るために通る道が根本から違うからです。
同じ「不動産」として一括りに扱おうとした瞬間、いちばん時間のかかる一筆に全体が引きずられます。
この記事で分かることは3つです。
- 山林・農地・別荘・空き家・中古住宅で、売り方がどう違うのか
- 自分の土地が「今すぐ動くもの」なのか「順番を待つもの」なのか
- 複数の種別がまとまって残っているとき、どこから手をつけるか
②売却HPのカテゴリ「種別別の売り方の違い」の入口として、一枚で見渡せる形に整理します。
種別によって、そもそも何が違うのか?
違いは3つに集約されます。①誰が買えるか ②どの手続きが時間を決めるか ③何が値段を決めるか——この3つです。
売れない・進まないと感じるとき、原因はほぼこのどれかにあります。買い手の資格が法律で絞られているのか、役所の会議の回数で待たされているのか、比べる取引事例がなくて値段の当たりがつかないのか。逆に言えば、この3つを先に見分けておけば、どの筆から着手すべきかが自然に決まります。
以下、種別ごとに見ていきます。
山林はどう売るのか?
山林は買い手の資格に制限がなく、手続きも許可ではなく届出で済む一方、買い手の母数が小さく、境界が止まりどころになります。
山林に関わる手続きは、おおむね次の3つです。
- 森林の土地の所有者届出——相続などで新たに森林の土地の所有者になったときは、90日以内に市町村へ届け出ます(森林法)。売買で取得した買主側にも同じ義務が生じます。
- 伐採及び伐採後の造林の届出(伐採届)——木を伐るときは、伐採の90日前から30日前までに市町村へ届け出ます。これは許可ではなく届出です。
- 林地開発許可——1ヘクタールを超える規模で開発する場合に必要です。当社が扱う規模ではまず該当しません。
農地のように「許可が下りるまで動けない」構造ではないため、条件が整った山林は手続き上いちばん早く動きます。実際に止まるのは別のところです。境界です。何十年も人が入っていない山では杭が藪に沈み、隣の所有者も相続で枝分かれしている。ここが片づかないと売買の話に入れません。
もうひとつ、山林は取引事例そのものが薄い種別です。近所の似た山がいくらで売れたか、というデータがほとんど存在しません。だから私は、山林の値段を机の上だけでは出しません。同じ「山林」と登記されていても、林道から入れるか、斜面が何度あるか、下の畑や集落とつながっているかで、暮らしの土台になる山とそうでない山に分かれます。必ず現地に立ってから値を出しています。
農地(畑・田)はどう売るのか?
農地は「誰が買えるか」が法律で絞られている唯一の種別で、しかも役所の会議の回数が時間を決めます。ここがいちばん誤解されます。
農地の売り方は、大きく二通りに分かれます。
①耕作する人へ、農地のまま売る(農地法3条) 買えるのは、農業を営む方・これから営む方に限られます。2023年に「一定面積以上を耕作していること」という下限面積の要件はなくなりましたが、取得した農地をすべて効率的に利用すること、農作業に常時従事することといった要件は残っています。移住希望者なら誰でも買える、というものではありません。
②宅地などに転用して売る(農地法5条) 転用できれば買い手の制限はなくなります。ただし県知事の許可が要り、その前段として市町村の農業委員会を通ります。農業委員会の総会は月1回が基本なので、書類が1日遅れると、それだけで1か月ずれます。
さらに、農業振興地域の農用地区域内にある農地——現場で「青地(あおじ)」と呼ぶ土地——は、転用の前に農振除外という手続きが必要です。申出の受付は多くの自治体で年に1〜2回に限られ、判断が出るまで半年から1年、そこから転用許可でさらに数か月。受付時期も判断の基準も市町村ごとに違います。
そしてもう一つ、書類に表れない条件があります。集落の中の田畑は、水の順番、水路の泥上げ、道の草刈りといった区の取り決めと一体で動いています。 その役を引き継げる買い手かどうかで、話がまとまるかどうかが変わる。ここは登記簿にも公図にも書かれていません。
この2〜3年、茅野市豊平あたりの田畑が、過去20年で見たことのない数で動いています。買い手のほとんどが20代〜40代で、畑つき・自給のできる暮らしを条件に探している方たちです。「農地は売れない」というのは、もう現場の実感と合いません。売れないのではなく、売り方を間違えると進まない種別です。
なお農地には、買い取らずに仲介でつなぐという選択肢もあります。集落の中にあって今も耕されている畑や田は、当社が買い取るより、耕す方へ直接つないだほうが収まりが良いことがある。土地ごとに売り方を選べる——これが農地でいちばんお伝えしたい点です。
別荘はどう売るのか?
別荘は手続きよりも、土地に付いてくる約束ごと(管理費・付帯権利)の確認が時間を決めます。
別荘地の区画には、その土地だけでは完結しない取り決めがぶら下がっていることがあります。
- 管理費・管理組合——年額の負担がいくらか、未払い分は誰が引き継ぐか、名義変更に組合の手続きが要るか。
- 付帯する権利——温泉の引湯権、専用の給水施設の利用権など。売却にあたって引き継ぐのか、解約できるのかは、契約書と組合の規約を見ないと分かりません。解約したくてもできない仕組みになっている場合があります。
- 建築協定・別荘地ルール——建てられる建物に制限がかかっていることがあります。
建物も値段に直接効きます。標高の高い区画ほど冬の条件が厳しく、使わない期間の水抜きがされてこなかった建物は配管が傷んでいることがある。その修繕費は、そのまま売値から引かれます。 築年数の古い別荘では建物に値段が乗らず、土地の値段に解体費相当が食い込むこともあります。
管理費の負担があること自体は弱みではありません。その費用で道が除雪され、水が出ている。売るときに問題になるのは、その中身を引き継ぐ人に説明できない状態のまま放置されていることのほうです。
空き家はどう売るのか?
建物を壊すかどうかの判断が先に来ますが、解体は最後に回すのが原則です。壊してからでは戻せません。
確認する順番はおおむね決まっています。
- 敷地に何が付いているか——接道の状況、水まわり(上水道か井戸か、下水道か浄化槽か)、隣接する畑や山林が同じ名義で付いていないか。
- 建物をそのまま渡せるか——雨漏り・傾き・シロアリ、そして残置物。家財が残ったままだと、それだけで話が止まります。
- 税の扱い——相続した空き家を売る場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から控除を受けられる特例があります。要件が細かいため、具体的な可否と金額は税理士か税務署にご確認ください(→ ②-C4 税務・諸費用)。
この種別でいちばん多いのは、「実家だけ」で考えてしまうことです。裏の畑、少し離れた山林を一緒に見ると、単体では値がつかなかった土地が、住まいとセットにすることで動くことがあります。畑つきの住まいを探している層が現実にいるからです。
中古住宅(まだ住める家)はどう売るのか?
空き家と違い、建物に値段が乗ります。だから「いくらで売るか」より「建物の状態をどう示すか」が結果を決めます。
人が住まなくなって間もない家、手入れが続いてきた家は、買い手にとって「買ってすぐ住める」ことが価値です。ここで効くのは次の3点です。
- 設備の現況——給湯・暖房・水まわりが今も動くか。寒冷地では暖房と断熱の仕様が価格に直結します。
- 手を入れた履歴——屋根の葺き替え、外壁、浄化槽の入替えなど。記録が残っていれば、そのまま値段の根拠になります。
- 敷地に付いてくるもの——薪小屋、物置、そして畑。移住を前提に探している層には、この付帯物が効きます。
空き家との違いは「建物を残すか壊すか」を迷わなくて済むことです。そのぶん、判断はいつ売り出すかに移ります。冬の入口に空き家のまま置くと、次の春まで傷みが進みます。
種別ごとの違いを一枚にすると
| 種別 | 誰が買えるか | 時間を決める手続き | 値段を決めるもの |
|---|---|---|---|
| 山林 | 制限なし(ただし探している人の数は少ない) | 伐採届(届出/30〜90日前)・所有者届出(90日以内) | 取引事例が薄い。林道・傾斜・境界・下の集落とのつながり |
| 農地(耕作のまま) | 農業を営む方に限られる | 農地法3条許可(農業委員会の総会=月1回) | 水・日照・区画の形・道の付き方・区の取り決め |
| 農地(転用して売る) | 許可が下りれば制限なし | 農振除外(青地の場合・年1〜2回受付)→ 農地法5条許可 | 転用後の宅地としての条件 |
| 別荘 | 制限なし | 管理組合・付帯権利の確認、建築協定 | 建物の状態、標高と冬の条件、毎年の固定費 |
| 空き家 | 制限なし | 建物を残すか壊すかの判断(解体は最後) | 建物の残り、接道、水まわり、敷地に付いてくる土地 |
| 中古住宅 | 制限なし | 実質なし(売り出す時期の判断) | 設備の現況、手を入れた履歴、暖房と断熱、付帯物 |
複数の種別をまとめて相続した場合、どこから手をつけるのか?
全部を同じ土俵に並べず、「お金に変えられるもの」「つないで動かすもの」「今は動かさないもの」の3つに仕分けるのが先です。
八ヶ岳西麓の相続は、5筆から、多いときは20筆を超えます。宅地・畑・田・山林・私道の持ち分が混ざっていて、種別ごとに通る道が違う。これを一括で「売却」として進めようとすると、いちばん遅い筆に全体が引きずられます。
- A:お金に変えられるもの——集落の隣の畑、まだ機能している山林、接道のある土地。当社の自社買取や、他社の買取へ引き継ぐ形で動かせます。
- B:つないで動かすもの——耕されている集落内の農地など。買い取るより、耕す方へ仲介でつないだほうが収まるものがあります。
- C:今は動かさないもの——接道のない山林、境界が確定できない土地。隣接地の所有者への打診、相続土地国庫帰属制度の検討、あるいは「持っていて構わない」と腹を決める判断もここに入ります。
動かないものは動かないと認めて、その上で何ができるかを考える。 無理に全部動かそうとするより、結果として早く片づきます。
この仕分けそのものが査定の仕事です。おおよその目安は1分無料査定からご確認いただけます。
八ヶ岳ライフが扱わないもの
太陽光発電設備・大型蓄電池、宿泊事業用(ペンション・ホテル等)の物件は扱いません。 固定費が高く人手に依存する仕組みで、当社がご案内している「固定費が低く、必要に応じて縮められる暮らしの構造」と噛み合わないためです。投資・転売・節税のみを目的とした取得のご相談もお受けしていません。
自社買取の対応エリアは茅野市・原村・富士見町です。査定・売却のご相談は県内で承ります。
まとめ——「不動産を売る」ではなく「この一筆をどう動かすか」
山林は境界で止まり、農地は買い手の資格と会議の回数で待たされ、別荘は付帯する約束ごとで、空き家は建物の判断で止まる。止まる場所がそれぞれ違うのだから、一筆ずつ売り方を選ぶしかありません。
当社は、自ら買い取ることも、仲介でつなぐことも、今は動かさないと申し上げることもあります。
不動産鑑定士・朝倉宏典より
種別を見分けるのは、早く売るためではなく、順番を間違えないためです。 相続した土地は、一度に片づくものではありません。1年、2年とかかるのが普通です。その間ずっと全部を抱えているより、動くものから動かして、動かないものは動かないと確かめておくほうが、ご家族の負担はずっと軽くなります。その伴走者になれればと思っています。
(締め)どの種別がどこで止まっているのか——まずは一筆ずつ見るところから。おおよその目安は1分無料査定、売却全般のご相談は当サイトのお問い合わせから承ります。山林は八ヶ岳の山林サイトもご覧ください。
よくある質問
Q. 農地は農家でないと買えないのですか? 耕作目的のまま売買する場合(農地法3条)は、農業を営む方・これから営む方に限られます。2023年に下限面積の要件はなくなりましたが、常時従事や全部効率利用といった要件は残っています。宅地などへ転用して売る場合(農地法5条)は、許可が下りれば買い手の制限はなくなります。
Q. 青地(農振農用地)だと言われました。売れませんか? 売れないわけではありませんが、転用するには先に農振除外の手続きが要ります。申出の受付が年に1〜2回に限られる自治体が多く、判断まで半年から1年、そこから転用許可でさらに数か月かかります。耕作する方へそのまま引き継ぐ道と、どちらが現実的かを先に比べてください。
Q. 山林を売るのに許可は要りますか? 通常は許可ではなく届出です。木を伐るときは伐採の90日前から30日前までに市町村へ伐採届を出します。1ヘクタールを超える開発をする場合は林地開発許可が必要です。相続などで森林の土地を取得したときは、90日以内の所有者届出も必要です。
Q. 空き家は解体してから売ったほうが早いですか? 解体は最後に検討してください。建物を残したまま売れる場合や、敷地に付いてくる畑・山林と合わせることで動く場合があります。壊してからでは戻せません。税の特例の要件にも関わるので、順番を決める前に一度ご相談ください。
Q. 複数の種別がまとまっています。全部まとめて買い取ってもらえますか? 一筆ずつ判定します。当社が買い取れるもの、仲介でつないだほうが良いもの、今は動かさないほうが良いものが混ざっているのが普通です。土地ごとに売り方を選べます。
出典
- 農地法第3条(権利移動の許可)・第5条(転用を伴う権利移動の許可):農林水産省「農地法関係事務に係る処理基準」
- 農地法3条の下限面積要件の廃止(2023年4月1日施行):農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律
- 農業振興地域の農用地区域からの除外:農業振興地域の整備に関する法律。受付時期・所要期間は市町村により異なる
- 伐採及び伐採後の造林の届出(伐採の90日前〜30日前)・森林の土地の所有者届出(90日以内)・林地開発許可(1ha超):森林法
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除:国税庁タックスアンサー No.3306。適用の可否は個別に税理士・税務署へ確認のこと
- 相続土地国庫帰属制度:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
- 相続登記の申請義務化(2024年4月1日施行・3年以内・10万円以下の過料):法務省

