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2026/09/11大相続時代、みんなが売ったら土地は値下がりする?——茅野市の取引を帯で分けて見えたこと
大相続時代、みんなが売ったら土地は値下がりする?——茅野市の取引を帯で分けて見えたこと
「団塊の世代の相続が重なるこの十年で、土地が一斉に売りに出て、値崩れするのではないか」
八ヶ岳西麓(茅野市・原村・富士見町)で相続のご相談をお受けしていると、この一、二年、よくいただく質問です。
茅野市の数字を見ると、答えは一つではありません。公的な地価は、住宅地でこの9年に18%下がりました。ところが実際の売買を市街地の側と標高の高い側に分けると、2020年から2024年にかけて、1㎡あたりの単価は市街地側で2割下がり、標高の高い側では6割上がっていました。
同じ市の中で、逆を向いています。大相続時代の全体像を追ってきたこのシリーズの最後に、相続した土地の値段をどう読めばいいかを整理します。
大相続時代に土地が一斉に売り出されたら、値崩れしますか?
茅野市の数字を見る限り、売り物があふれて値崩れしている様子はありません。相続した土地は、売りに出るより先に「止まる」ことのほうが多いからです。
団塊の世代の相続が始まっているのに、茅野市の宅地の取引は、2020〜2022年の年110〜131件から、2023〜2024年は年83〜89件に減っています。コロナ禍の移住が一段落した影響もあるので、これだけで理由は決められません。ただ少なくとも、売り物があふれて取引が膨らんでいる数字は出ていません。
相続した土地は、名義が兄弟で分かれる、場所が分からない、県外に住んでいて手が回らない、といった理由で、売りに出ないまま残ることがよくあります。所有者の分からない土地が全国で約410万ha、九州より広いと推計されたのは、その積み上がりの結果です。
それでも、値下がりしている土地はあるのではないですか?
あります。茅野市で下がっているのは、主に市街地の側です。ただし下げ幅は年々縮んでいます。
茅野市の取引を、地区ごとに市街地の側と標高の高い側に分けると、こうなります(1㎡あたりの単価の中央値、かっこ内は件数)。
| 2020年 | 2024年 | 変化 | 取引に占める割合 | |
|---|---|---|---|---|
| 市街地の側 | 34,500円(28件) | 27,000円(36件)/約8.9万円/坪 | 2割下落 | 2〜4割 |
| 標高の高い側 | 6,750円(82件) | 11,000円(53件)/約3.6万円/坪 | 6割上昇 | 6〜8割 |
市街地の側は年に30件前後と件数が少なく、年による振れが大きい数字です(2022年は41,000円でした)。向きとして読んでください。
毎年9月に発表される地価調査も、住宅地で1㎡あたり24,400円(2016年)から19,900円(2025年)へ下がりました。ただ、この地点は市内に10か所しかなく、標高900mを超えるのは2か所だけです。公的な地価が主に見ているのは、市街地です。また公的な地価は、毎年同じ地点を前年と比べながら慎重に評価する仕組みなので、実際の取引よりゆっくり動きます。
その市街地も、年間の下げ幅は住宅地で2022年の−0.8%から、2025年は−0.3%へ縮んでいます。落ち続けているというより、下げ止まりに近づいている数字です。
では、動いているのはどこの土地ですか?
標高の高い側の、集落や山際の土地です。茅野市で売買される土地の6割から8割は、こちら側です。
買いに来る人も変わりました。エコーライン前後では、定年前後の方が中心だった時期から、ここ数年は20代後半から40代、子育て世帯や、仕事を変えて移ってくる方が増えています。<!-- link: ②-C1-2 --> 上がっている理由は、暮らす人が買いに来ていることです。値上がりを見込んだ取得や転売を目的としたご相談は、当社ではお受けしていません。
ただし、6割上がったといっても1坪あたり3.6万円前後の話です。奥の山林や接道のない筆まで一緒に動いているわけではありません。<!-- link: ②-C1-6 --> 原村・富士見町は、茅野市とは別に、町ごとに帯で分けて見る必要があります。
市全体の平均地価を見て、売り時を決めてはいけないのですか?
平均は当てになりません。広い土地がよく動いた年は、それだけで単価が下がって見えるからです。
茅野市の取引では、200㎡までの土地は1㎡あたり27,000円、1,200㎡を超えると4,500円です。総額は逆に、300万円から1,000万円へ上がります。2025年(年の途中まで)は700㎡を超える取引が57%を占め、単価の中央値が下がりました。値下がりではなく、動いた土地の大きさが変わっただけです。
平均だけを見て「下がっているから急いで売る」も「上がっているから待つ」も、どちらも判断を誤ります。
朝倉所見|駅前は、数字より先に実感が来た
(※前半は定点観測で記録した朝倉さんの一言です。後半の〔 〕に、標高の高い側での一場面をいただけますか)
駅前は、数字より先に実感が来ました。ここ数年で食品スーパーが撤退し、銀行の支店が閉じ、駅の商業施設もなくなりました。駅の周辺は、そもそも取引が少ない。
〔標高の高い側で、買いに来た方が現地で何を確かめていたか。例:畑の土を手に取った、水路の当番を尋ねた、冬の道を聞いた、など。3〜4行〕
同じ市の中で、見ている景色がこれだけ違います。市全体の数字をひとつにまとめると、この二つが混ざって見えなくなります。
相続した土地がどちら側か、どうすれば分かりますか?
地番ごとに、標高と、集落の内か外かと、周りの畑や水路が生きているかを見ることです。
公的な地価の地点がない土地は、周りで実際に売買された事例から値を組み立てます。不動産鑑定士が普段している作業です。当社は一筆ずつ現地を見て、自社で買い取る筆、仲介でつなぐ筆、いまは動かさない筆に分けています。土地ごとに売り方を選べます。農地転用や境界確定、水利の調整も自社で段取りします。
大相続時代の十年を、相続人はどう通り抜ければいいですか?
市場全体がどうなるかより先に、自分の土地がどこにあり、どちら側にあるかを知ることです。
このシリーズでお伝えしてきたことを、順に並べるとこうなります。
- 親が元気なうちに、場所と使われ方を聞いておく <!-- link: ②-C1-9 -->
- 相続したら、種別ごとに分けて考える <!-- link: ②-C1-4 -->
- 名義を分けたまま止めない <!-- link: ②-C1-7(kyoyu-meigi-susumanai) -->
- 値段は、市全体の平均ではなく一筆ごとの位置で読む(この記事)
急ぐ理由も、待つ理由も、市場全体の数字からは出てきません。出てくるのは、一筆ごとの位置からです。
一筆ずつ、どちら側かを確かめるところから
納税通知書の地番だけで構いません。場所が分からない筆があっても大丈夫です。
確定の査定額は、現地を見てからお出しします。ご相談は平日の日中に承っています(水曜定休・土日は予約制)。
※地価は地価調査のみで集計しています(地価公示とは混ぜていません)。取引は国土交通省 不動産情報ライブラリの茅野市の宅地(土地)取引を、地区名で市街地側(宮川・ちの・塚原・本町・仲町ほか)と標高の高い側(豊平・玉川・北山・湖東・米沢・泉野・金沢)に分けた近似です。件数は年60〜131件(2025年は年の途中まで)。坪換算は1坪=3.3058㎡。所有者の分からない土地の面積は、所有者不明土地問題研究会の最終報告(2017年・2016年時点の推計)によります。

