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2026/07/13相続人が複数いると、なぜ土地は動かなくなるのか——八ヶ岳西麓の「共有名義」という詰まり
相続人が複数いると、なぜ土地は動かなくなるのか——八ヶ岳西麓の「共有名義」という詰まり
親から受け継いだ土地を、とりあえず兄弟姉妹の全員名義にした。あるいは、名義を変えることすら手つかずのまま、何年も過ぎている。八ヶ岳西麓(茅野市・原村・富士見町)で相続のご相談を受けていると、このかたちで止まっている土地に、とてもよく出会います。
売りたい気持ちがないわけではない。むしろ「そろそろ整理したい」と思っている方は多い。それでも動かない。理由は、土地そのものではなく、名義が複数人に分かれていることにあります。この記事では、共有名義がなぜ土地を止めるのか、放っておくと何が起きるのか、そしてどこから動かせばいいのかを、煽らずに整理します。
相続人が複数いると、なぜ土地は動かないのか?
一人でも反対したり連絡が取れなかったりすると、売却そのものが進まなくなるからです。
不動産を売るには、名義人全員の合意と署名・押印が必要です。共有名義とは、一つの土地を複数人で持っている状態のこと。持分が3分の1ずつであっても、売却の意思決定には全員が関わります。
つまり、兄が売りたくても、弟が「まだ考えたい」と言えば止まる。妹が遠方に住んでいて連絡が取りづらければ、そこで止まる。誰かが病気や高齢で判断が難しくなっていれば、後見の手続きから始めることになる。土地の価値や立地の問題ではなく、関係者の足並みが揃うかどうかが、そのまま売却の可否になってしまうのです。
これは「誰かが悪い」という話ではありません。それぞれに事情があり、それぞれの人生のタイミングがある。ただ、その全員が同じ方向を向く瞬間は、意識してつくらないと訪れにくい。これが共有名義の最初の詰まりです。
共有名義のまま放置すると、何が起きるのか?
時間が経つほど関係者が増え、合意がさらに難しくなります。
いちばん重いのは、世代をまたぐことです。たとえば三兄弟の共有名義のまま一人が亡くなると、その持分はさらにその子どもたちへ相続されます。三人だった名義人が、次の代では五人、六人と枝分かれしていく。会ったこともない親族どうしで、一つの土地の売却を決めなければならなくなる——これが、全国で所有者不明の土地が増えている大きな原因のひとつです。
制度の面でも、放置しにくい方向へ動いています。2024年4月から相続登記が義務化され、名義変更を長く放置すると過料の対象になり得ます。加えて2023年4月施行の民法改正で、遺産分割の話し合いで「誰が親の面倒をみたか(寄与分)」「誰が生前に援助を受けていたか(特別受益)」といった事情を反映できるのは、原則として相続開始から10年までとされました。10年を過ぎると、こうした個別事情を差し引かず、法律で定められた割合(法定相続分)を前提に分けることが基本になります。話し合いに期限そのものがついたわけではありませんが、公平に分けたいなら早いほうが有利、という設計に変わったということです。 OAG + 3
放置は「何もしていない」状態ではなく、選択肢が静かに狭まっていく状態です。だからといって焦って動く必要はありませんが、動かせるうちに動かすほうが、後の世代の負担は軽くなります。
八ヶ岳西麓の山林・農地で、特に詰まりやすいのはなぜか?
種別が混ざったまま、まとめて相続されるケースが多いからです。
この地域の相続でよくあるのは、宅地・畑・田・山林が一つの相続にまとめて含まれているかたちです。八ヶ岳西麓は、区(集落)・畑・山林という三つの層が、いまも実態として機能したまま残っている土地柄で、そのぶん一つのご家族が複数の種別を持っていることが珍しくありません。
ところが、種別ごとに売り方も手続きもまったく違います。農地には農地法の許可が要り、買える人の条件も決まっている。山林には境界の問題や伐採の届出が絡む。宅地はまた別のルールで動く。これが共有名義と重なると、「全員の合意」と「種別ごとの手続き」の両方を同時に満たさなければならなくなり、どこから手をつけていいか分からないまま止まってしまう。
さらに山林は、そもそも自分の土地がどこにあるのか、境界がどこなのかが分からないことも多い。「親が山を持っていたらしい」という記憶だけが残っている、というご相談も実際にあります。種別の複雑さと共有名義が掛け合わさると、詰まりは一段と深くなります。
動かすには、何から始めればいいのか?
まず「今どうなっているか」を正確に把握することから始めます。
順番としては、大きく三つです。
一つめは、現状の把握。誰が名義人になっているか、どんな種別の土地がどこにどれだけあるかを、登記や公図、固定資産税の通知などから洗い出します。手元に納税通知書しかない、という状態からでも、地番をたどって一筆ずつ場所を突き止めていくことができます。
二つめは、種別ごとの仕分け。宅地・農地・山林で、それぞれ何ができて何に許可が要るのかを整理します。すべてが同じように売れるわけではなく、すぐ動くもの・時間のかかるもの・当面は保有するものに分かれます。ここを最初に見極めておくと、無理に全部を一度に動かそうとして疲れてしまうことを避けられます。
三つめは、関係者の合意の設計。誰にどう声をかけ、どんな順序で話を進めれば全員が納得しやすいか。ここは土地の問題というより人の問題で、いちばん時間がかかるところでもあります。だからこそ、金額の話から入るのではなく、「この代で整理をつける」という共通の目的を先に共有できると、話がまとまりやすくなります。
朝倉所見
共有名義のご相談で、私がいつも最初にお伝えするのは「ホームランを狙わなくていい」ということです。全部を高く一括で売る、という一発の解決を目指すと、たいてい途中で止まります。関係者が多いほど、全員が満点だと感じる着地はまず存在しないからです。
現場で見ていて動くのは、むしろ逆のケースです。まず動かせる一筆から動かす。山林なら山林だけ、畑なら畑だけを先に片づけて、全員が「一歩進んだ」という実感を持つ。その小さな一歩が、次の合意のハードルを下げていきます。二十年以上この地域で査定と買取をしてきて、共有名義がほどけていくときは、たいていこの順番でした。
もう一つ。ご相続人どうしが遠方に散らばっていて、全員で高く売る調整が現実的でない場合、私たちが自社で買い取るという出口が、結果として全員にとっていちばん納得しやすい形になることがあります。仲介だと買い手が現れるまで全員が宙ぶらりんになりますが、買取であれば時期と金額が先に定まる。「誰かを説得し続ける」状態から降りられることが、金額以上に安心につながる——そういう場面を、何度も見てきました。
全員が納得できる出口を、一緒に設計する
共有名義は、土地の欠点ではありません。関係者が多いぶん、合意までの設計に手間がかかるというだけのことです。そして、その設計こそ、私たちが二十年以上かけて積み重ねてきた仕事の中身です。
八ヶ岳ライフでは、茅野市・原村・富士見町の共有名義の土地について、現状の把握から種別の仕分け、関係者の合意づくり、そして自社買取までを一貫してお手伝いしています。「ご自分の代で整理できた」という状態を、次の世代に渡すために。どこから手をつけていいか分からない、という段階のご相談を、いちばん歓迎しています。まずは今の状況を、そのままお聞かせください。

